場末で聞く英雄譚に、賢者の記した争いの系譜に、あるいは永遠を刻む石碑に、
あらゆる人々の記憶に彼の名は語り継がれる。

しかし彼の姿を本当に知る者はいない。

世界を滅ぼさんとした魔族を討ち取った勇者だと或る人は言う。
父の冤罪を証明し正義を貫いた義者だと或る人は言う。
愛する者を守らんが為自らを犠牲にした尊き者だと或る人は言う。


彼らの言葉は真実であるが故にそのさらに奥にある秘密を覆い隠す。

誰が知っているだろうか。
彼こそが世界の崩壊を導く鍵だということが。
誰が知りえるだろうか。
彼の身に刻まれた神々の秘蹟を。


あるが故に知る者は無く、孤独を共に永遠の流浪を繰り返す。
人々は語り継ぐ。その名ばかりで中身の無い空虚な叙事詩を。

――金色の鍵の英雄、エイジの物語を。