初めてその御姿を拝見した時、こんな美しい方が存在していいのだろうかと目を疑ったでやんす。

磨き抜かれた最高級の紅玉より深いルビーアイ。
時経た古代の女神像のように流麗な曲線を描くかんばせ。
夜闇に浮かぶ、流星を束ねたかのような煌きの美しい白銀の髪。


そして何より、周囲の空気まで浄化してしまいそうな神々しい神気。

近づくだけであっしの中に流れる妖魔の血が沸騰しそうなほどに熱くなったのを覚えているでござるよ。
自慢じゃないでやんすが、今まで生きてきてフェルシア様のような空気を纏った人間に出会ったことは結構あったでござる。
その方々も、フェルシア様ほどでないでやんすが、とっても美しかったのを覚えてるでやんす。
でもあっしを見つけると、まるで親の仇を見つけたかのような形相になって殺そうとしてくるのでござる。あっしは何もしていない。あっしはただ、見ていただけだ、と言っても聞く耳持たずでござるよ。

悲しいけどこれが人生、と思っていたでやんすよ。

見る人にはわかるもんでやんしたよ、あっしに流れる血は。
そういう人達はとくにそっちへのセンサーが鋭いでやんすが、普通の人にもなぁんか『違う』っていうのがわかっちゃうのも多々いるらしくて、何もしていないのに物を売ってくれないこともいっぱいあったでござる。
エイジ達にあった時も、偶然行き倒れてしまっていたわけではないでやんしたよ。

でも、フェルシア様はそんなあっしにごはんをくれたばかりか、薄くでやんしたが微笑みかけてくれたでござる。
妖魔の血を引くあっしに。こんな惨めな姿のあっしに。
これまでずっとずっと独りで生きてきたでやんす。こんな身の上でござるからまともな職になんてつけず、やむを得ず盗みもやったでやんす。強盗まがいのこともして、殺しにも手を染めやした。

それでも、仕方ないから、と諦めてたでやんすよ。
ずっとこういう生活が続くと思ってたでござるよ。


エイジ達に会ってあっしは変わりやんした。変われたと思ってるでござる。
こんなあっしも世界を救って、シグ達と一緒に英雄と呼ばれて、フェルシア様と一緒に粛清装置を止めて回って。
時々、人に感謝されて。
嬉しくて恥ずかしくてむず痒くて、思わず変な声を出したら笑われたでやんす。
ひどいでござるよ、こっちはそんな言葉に耐性がないでござるのに。
本当、人生どうなるかわからんもんでやんす。








「――ベネット、出発よ…」

「あっ、フェルシア様、お待ちくださいでやんす―――!!」